• 茂森仙直さん推薦メッセージ

  • 推薦メッセージ(全文)

    broken image


     

    茂森仙直さんは、ミテモが運営した2021年度の名古屋市主催の高校生向け起業体験事業「スタートアップ・ユースキャンプ」に、実務家コーチとして参画してくださいました。また、同プログラムに参加した高校一年生女子の保護者でもあります。コーチとして、いち保護者として、本プログラムへのメッセージをいただきました。

    茂森仙直さんプロフィール

     

    株式会社アクアリング 代表取締役社長 兼 プランナー、プロデューサー

    大学を卒業後、人材系会社を経て、2001年アクアリング入社。IMCを視野にデジタルコミュニケーションを主力とするチームを指揮。
    WeBBY awards、Singapore Good Design Mark、Web Grand Prix、文化庁メディア芸術祭、DIGITALSIGNAGEAWARD等受賞。ボルダリングとデジタルを掛け合わせたARボルダリング「WONDERWALL」で2017、2019年日経トレンディベストヒット予想コンテツに選出。
    地元滋賀長浜と現在居住の名古屋の発展を目的に街づくり活動にも尽力。2014年よりStartup Weekendでコーチ・審査員も務める。2019年8月より現職に。

     

    ―保護者としてご覧になって、いかがでしたか?

     

    うちの娘ですね、高校一年生で参加させていただいて。終わったあとで、本人に「どうだった?」ときいたんですけど、「参加して非常に満足している」と言っていました。それは保護者の僕が横から見ても明らかで、スタートアップ・ユースキャンプに参加したことをきっかけに、明らかに人生が変わったなと思います。

     

    ―具体的には、どんな変化があったのでしょう?

     

    プログラムが終わってから、起業を体験したっていうことを友達に言ったところ、実は同じような考えを持っている友達に学内でも出会って、その子たちと、冬にはまた別のプログラムに参加して、自分でビジネスモデルを発表する、そういうことが今、連鎖的にバーッと起こっています。彼女たちの世代らしいなと思うんですけど、こういうビジネスモデルをやるから高校生募集!ってツイッターでばらまいていて、全国からそれに賛同する高校生が集まってきて、その子たちとグループを組んで、それでビジネスをやろうという話をオンライン上でやっていると。もう、ちょっと勉強どころじゃないぐらい、ビジネスにハマっちゃってですね。非常に、彼女の中では濃厚な高校生活が、今送れているところですね。本人も、高校一年生のうち、つまりこの残りの3月までに、起業したい、会社を立ち上げるという事実を作りたいって、言っています。そこまで行くかっていう驚きではありましたね。はい。

     

    ―プログラムに参加を決めたきっかけを教えてください。

     

    私はベンチャーをやってきて、家内は公務員なんですよね。結構両極端な働き方に対する価値観が存在する中で、彼女としても、将来の働き方をどうするのがよいだろうということは、おそらく全然わかっていなかったですね。そういった中で、僕が、本人の適性というか可能性といったところで、こっちの道もあるんじゃないかっていうことで、勧めてみました。これが、彼女にとってひとつ、大きな転機、可能性と感じてくれたみたいで。

     

    ―参加する前は、どんな様子でしたか?

     

    本人は半信半疑でしたね。高校の同級生たちは、将来は外資系に行きたいとか、医療系に行きたいとか、いわゆる大学を出て普通に就職するっていう選択肢を考えている中で、僕がこのイベントを紹介して。でも、彼女がお友達に見せた時に、「いや、私は参加しない」っていうわけです。 友達の興味ない様子に本人も戸惑っていたっていうのはありましたね。本人も、果たしてどうなんだろうと、ほとんど半信半疑で参加して。

     

    ただ、初めに説明会で、レオス・キャピタルワークスの藤野さんやココナラの南さんに話をしていただいて。その時に、女性の働き方みたいなお話のなかで、勤めて出産したら産休とってまた復帰してみたいな、そういう働き方以外の選択肢もあるんだ、というのは、結構大きなきっかけになったようです。

     

    本人は元々は美大志望だったんですよ。中学生のときに、デザインの方向で将来は食べて行きたいと、本人も絵が好きっていうのもあってですね。それに対して僕は、デザインって、グラフィックだけじゃなくて、大きく世の中を形作るようなことを考えるっていうことも実はデザインっていうんだよ、ビジネスを考えることもデザインなんだよって言ったときには、ふーんみたいな反応でしたね。なので、もう本当にゼロベースで参加していたのが正直なところですね。起業に興味があったってわけではなく。

     

    ―コーチ目線では、いかがでしたか。

     

    コーチをやって、参加者のレベルが高いなあって思いました。参加してくれた子たちの意識、例えばSDGsをよく分かっていて、それに対してどう課題解決できるのかみたいな話ができるっていうのは、素晴らしかったですね。高校生でもこんなに感度が高いんだなと感じました。

     

    あとはITリテラシーが、彼女彼らはすごく高いので、slackとかmiroを上手に使いこなしてそれを日常的なものにするっていうところで。あの世代ならではの習得の速さと、デジタルネイティブだなあっていうことは非常に感じましたね。

     

    ―このプログラムの良かったところは、どんなところでしょうか。

     

    彼女がいちばんに言っていたのは、人との出会いが非常に財産になったと。同じ高校じゃない、同じ偏差値の中で囲われた集団ではなくて、価値観とか将来のミッションビジョンとか、そういったところで集うっていうところの化学反応って言いましょうか。それは、この世代でもここまであるんだということを感じました。人から学べるっていう刺激はすごくたくさんあって、人の広がりがある程度期待できないと、参加しても意味ないなあと言っています。

     

    あと、学校からの強制で同様のプログラムに参加しているパターンもあるらしいんです。娘が言うには、そのように来ていた学生はやらされ仕事みたいな感じになりやすいと。その点、このプログラムは、基本的に、みんながそういう思いを持って自分できているっていうところで、テンションがそろっているんですよね。意識がそろっているんですよね。そういった部分は彼女にとって非常に実りのある場だったみたいです。

     

    しかも、今もつながっているお友達の話とか聞くと、ちゃんと勉強もやって、ちゃんと起業もやってっていうその両立感が、同じ高校の中だったらわからなかったっていうのを言っていました。彼女にとっては、はじめ、起業は起業、勉強は勉強みたいな、勉強が疎かになっちゃったみたいな感じの言い訳の中で過ごしていたんですけど、ほかの子たちは、例えば夜中1時ぐらいまでミーティングをした後に、「私、今から宿題するから」って言う子がいるんですね。同じ一年生の子が。世の中の水準とか基準っていうのも、人との出会いの中で学びがあったっていうところもありましたし、あと確実に進路が定まってきましたね。もう行きたい大学とかテーマが彼女の中でいくつか見えてきて。勉強するということの意味が出てきたんですね。要は、大学は手段として、自分の自己実現の手段として見えてきたので、勉強への意味付けがしっかりできて、勉強も頑張んなきゃっていうドライブが入ったっていうのとかはすごいなと思いました。

     

    もうひとつ、冬以降に参加したほかの起業体験系のプログラムとの比較で、スタートアップ・ユースキャンプ自体への感想をきいたところ、「ちょうど良い」って言っていました。初めて参加するというレベルでは、あれぐらいがいいと。他のやつはもうガチンコすぎて、大学生とかがいると目線がなかなか合わない。多分スタートアップ・ユースキャンプで助走ができたから、なんとなく世界観がわかった中で入れたんですけど、あれがなかったら差がありすぎてついていけなくて、おそらくやめていたかもしれない、と言っていました。なので、そういった意味では、プログラムとしてはよかったんじゃないかなと。初めにちゃんと2時間かけて、成功されている方に、起業したらこんないいこと大変なことがあるんだよ、みたいなことをしっかり伝えていただいた上で参加したっていうところも、彼女たちには響いていたんで、はい、非常に良かったんじゃないか。

     

    ―このプログラムはどんな子に向いているでしょうか。また、どんな保護者に勧めたいでしょうか。

     

    いい大学に行って、たとえば国公立に行って、で、就職はそれなりの所に行くみたいな、そういう「王道」で考えている子たちがまだほとんどかなって思っています。そのレールに乗れなかった子たちは、もう社会に対して半歩遅れているとかハンディキャップがある、みたいな感覚の子もいるんじゃないかなって凄く感じています。たとえば進学校で、学業に乗り切れない子。なんか違うな、とかですね。ただし頭はいいと思うんですよ。で、そういう子たちはけっこう対象になってくるんじゃないかなって思いました。一芸に秀でている子だったりとか。

     

    学校の先生は、どうしても学業っていう土俵で戦わせようとしちゃいがちなんですけど、僕は、自分なりに戦って勝てる土俵っていうものをみんなが見つけるべきだって思っていて。そういった、自分が自分の個性として戦える土俵っていうものを、本当は、学校教育はもっと示すべきだって思っていて、その中のひとつとして起業を示すべきだし、当然そういう選択肢を知らない子たちが多いと思うので。いい大学に行かないといい就職できなくて幸せな家庭が築けないっていうことに対して、もう、高校でいいとこ行けなかったら諦めちゃっている子とか含めて、それは言いたいなーっていうのはちょっとおもいますね。

     

    ―僕らがこの事業で、大切にしていることがあります。それは、未来は予測できない、確実な成功とか無難な選択はないなかで、「挑戦」が大切だということです。そのために、良質な失敗をする、挑戦と失敗の総量を増やすことが大事だと思っています。そんな想いで取り組んでいるこの営みに対して、また、僕らミテモに対して、応援のメッセージをお願いします。

     

    人の成長って、経験学習でしかないと思っています。ビジネスも社会もそうですけど、幅広い経験を数多くしたほうが、人としての成長につながるはずです。また、今後、先が見えない世の中になるので、いろんな状況に対応できるっていう意味では、たくさんの経験と、そこで身につけたたくさんの知恵をもっていた方が、フレキシブルに対応できると思うんですよね。それを意識して若いうちからやっていくのと、後から気づくのでは、大きな差になってくるので、さっきおっしゃった、挑戦と失敗を繰り返すっていう部分に関しては、僕は強く賛同します。

     

    起業を体験するというと、ともすると、なにか特別なもののように思われがちですけど、そこまで特別ではないよ、といいたいです。極端な話、部活感覚でやったらよいです。今は、そもそも部活の選択肢がだいぶ減っています。部活をやっていなかったり、やっていても単純に消去法で選んでいたりとかします。僕は、この起業の体験は、いわゆる部活のひとつだよというぐらいのノリがよいんじゃないかって思います。そんなんやって当たり前じゃん、くらいの、学習塾に行くぐらいの感覚。あとは、部活の練習着とかの一式を買い揃えるぐらいの感覚で、それにお金を出すみたいな。

     

    ―僕らも、社内のメンバーどうしで、「これはスポーツにしたいね」っていう話をしています。たとえばサッカーとか野球であれば、草サッカーや草野球のように、誰にとってもプレイする敷居は低い。遊ぶように体験していくっていうのが大事だと思っています。プロにならないとしてもサッカーをプレイすることに意義があるのと同じで、上手いとか下手とか関係なく、偏差値ももちろん関係なく、体験する機会が誰の手にも届くところにあること、その機会にちゃんと気づけることは、すごくつくりたい未来像のひとつですね。今、まさにそのことをおっしゃっていただいたなと思って。

     

    起業というチャレンジを、手軽な感じで、今まさにおっしゃったみたいな感覚でやっていくっていうことが、本当に、この世の中には大事なんじゃないかと、僕も強く思います。改めて、本当によいプログラムだと思います。ミテモは非常に素晴らしいことやってらっしゃるなと、とても共感しています。